江東区で障害年金の申請サポートをしている「心と福祉とお金に強い社労士」西川です。
こちらは、障害年金をもらえる3つの条件の一つである「保険料納付要件」について、詳しく解説しています。
障害年金をもらうための3つの要件の1つ「保険料納付要件」
障害年金をもらうには、次の3つの条件をすべて満たしていなければなりません。
この記事では、保険料納付要件について詳しく解説していきます。
保険料を一定以上払っていることが障害年金をもらえる要件
障害年金をもらうためには、初診日に年金に加入している(初診日要件)だけでは不十分です。
仮に、20歳から何十年も保険料を支払っていなくて、初診日の前日に保険料を払っただけで障害年金をもらえるとしたら、あなたはどう感じますか?
それはずるい!
きっちり保険料を支払っている人から見ると不公平と感じるのではないでしょうか。
そういった不公平を防ぐために、保険料を一定以上納付していない人は障害年金をもらえないルールになっています。
このルールが保険料納付要件で、基本的なルールと、特別ルールの2つがあります。
はじめに基本的なルールから説明します。基本的なルールは、3分の2要件と呼ばれています。
保険料納付要件の基本ルール(3分の2要件)
初めて病院で障害の原因となる病気やケガを診てもらった日を「初診日」といいますが、年金加入月から初診日の前日までに、保険料納付期間が3分の2以上あることが基本的なルールとなります。
基本ルール | いつから | いつまで | どの程度納付しているか |
---|---|---|---|
3分の2要件 | 年金に加入した月から | 初診日の前日まで | 3分の2以上納付している |
たとえば、年金加入から初診日の前日までちょうど12年あったとします。12年の3分の2は8年です。もし、この間に7年11か月納付していた場合、1か月足りないことになり、保険料納付要件の基本ルールを満たせません。
保険料免除や猶予の場合
では、保険料が免除になっている場合や猶予になっている場合はどうでしょうか?
たとえば、年金加入月から初診日の前日までちょうど12年あったとして、4年間が未納で、8年間が猶予期間であったとしても、保険料納付要件を満たすことになります。
保険料免除
免除の種類 | 所得基準(前年度の所得が下記の範囲内) | 将来もらえる年金額 |
---|---|---|
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | 全額納付の2分の1 |
4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 全額納付の8分の5 |
半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 全額納付の8分の6 |
4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 全額納付の8分の7 |
ただし、気をつけないといけないのは、保険料の一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)の場合は、免除されていない分を支払っていないと未納と扱われます。
たとえば、経済的事情で4分の3免除になった場合、免除されていない残りの4分の1は支払う義務があります。この4分の1の年金を払っていなければ、未納となります。
保険料猶予
猶予の種類 | 要件 | 所得基準(前年度の所得が下記の範囲内) | 年金額 |
---|---|---|---|
納付猶予 | 50歳未満 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | ゼロ |
学生納付特例制度 | 学生 | 128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等 | ゼロ |
猶予の場合は、保険料を納めていなくても、未納にはなりません(納付済と同じ扱いです)。
初診日以降に支払ったものは認められない
保険料納付要件は、初診日の前日までの期間の保険料納付月をカウントします。
この初診日の「前日」というのがミソです。
初診日の前日までに「支払っている」「免除申請している」「猶予申請している」ことが必要です。
初診日の当日以降に支払ったものは、納付済にカウントされません。
免除や猶予も同様で、初診日の当日以降に免除・猶予申請したものは、納付済にカウントされません。
病院で診察してもらってから、
「あっ、やっべぇ、保険料払ってなかった。すぐに払っとこ。ギリギリセーフ!」
いや、アウトです。
保険料納付要件の特例ルール(直近1年要件)
基本的には、この3分の2要件を満たしていなければならないのですが、この要件を満たせない人の救済措置のために特別ルールが設けられています。
初診日のある月の前々月からさかのぼって1年間の間に国民年金の未納がなければ納付要件を満たすこととする
これが保険料納付要件の特例です。この特例は「直近1年要件(直1・ちょくいち)」と呼ばれることがあります。
特別ルール | いつから | いつまで | どの程度納付しているか |
---|---|---|---|
保険料納付要件の特例 | 右の1年前 | 初診日のある月の前々月まで | 未納がない |
ただし、この特例には年齢要件があって、初診日時点の年齢が65歳未満であることが要件となっています。
免除や猶予については、3分の2要件と同様に納付済と同じ扱いです。
さらに、この特例ルールでは、基本ルール(3分の2要件)と違って、年金に加入しなくてよい期間(任意未加入期間)も納付済と同じ扱いとなります。
- 海外に住み、国内に住民票がなかった期間
- 昭和61年(1986年)3月以前の会社員や公務員の「配偶者」の期間
- 平成3年(1991年)3月以前の学生期間
②③は当時の法律では強制加入ではなかったためです。
ちなみに国民年金は60歳まで加入義務があります。60歳以降は国民年金を支払う必要がありません。
では、60歳~65歳の間に初診日がある場合はどのようになるでしょうか?
初診日から直近の年金加入していた時期までさかのぼって、そこから1年間未納がなければ納付要件を満たすことができます。
保険料納付要件の特例はいつまで?
保険料納付要件の特例は、特別ルールのため、期限付きのルールになります。
昭和60年(1985年)に年金制度の大改正がありましたが、このときに10年間の期限付きで特例が設けられました。
その後、この期限が10年ずつ延長され、現在は令和8年(2026年)3月31日までの期限となっています。
これがさらに延長されるかどうかは、基本ルールを満たしていない人にとっては非常に大きな問題です。
これについては、さらに10年延長されるようです。
一安心!
学生納付特例制度を活用しよう
会社員や公務員になれば、社会保険に加入するため、強制的に保険料が引き落とされます。
学生の間は、20歳になると自分で国民年金を払わなければなりません。
収入面で厳しい学生が、国民年金を支払うのは大変です。
そのため、学生納付特例という制度があります。
大学、専門学校などに在学中の学生は年齢問わず利用できますが、学生本人の収入要件(親の収入要件なし)があります。
この制度を利用すると、在学中は国民年金保険料を支払わなくてもよくなります。
ただし、将来の老齢年金の額には反映されないため、年金を満額もらうには、卒業後に支払う(追納)必要があります。
追納できる期限は学生納付特例の承認を受けた期間から10年ですが、3年以上前の保険料には加算額が上乗せされることに注意が必要です。
学生の期間中に学生納付特例を利用せずに、支払っていないという人が結構いると聞きます。
そうなると、学生中や社会人になってすぐに病気やケガで障害状態になったとき、保険料納付要件を満たせないことになりかねません。
学生のうちは、保険料を支払う余裕がないのであれば、必ず学生納付特例の手続きをしましょう。
保険料納付状況の確認方法
保険料の支払い状況は、日本年金機構が毎年送付する「ねんきん定期便」や、インターネット上で利用できる「ねんきんネット」で確認することができます。
障害年金申請を代行する社会保険労務士は、年金事務所で保険料納付状況を確認しています。
まとめ
障害年金をもらうための「保険料納付要件」を満たすためには、次のポイントを押さえておきましょう。
- 初診日のある月(65歳未満)の前々月からさかのぼって1年間の間に保険料の未納がなければ納付要件を満たせる(特別ルール・保険料納付要件の特例)
- この特例を満たせない場合は、初診日の前日時点で、加入月から初診日のある月の前々月までの間、未納期間が3分の1未満であれば(3分の2以上納付 or 免除 or 猶予)納付要件を満たせる(基本ルール)
- 免除や猶予でも保険料納付要件を満たせるため、経済的事情で払えない場合は、免除制度や学生納付特例制度、納付猶予制度を活用する
国民年金保険料は、すべて払う必要があるのですが、経済的事情で払えないケースがあると思います。
そのときは、市(区)役所に相談し、免除や猶予制度を活用しましょう。