障害年金でなぜ「日常生活の支障」が問われるのか?就労収入が少なくても障害年金がもらえないのはなぜ?

「働けなくなったのに障害年金がもらえない」「収入があるのに障害年金を受け取っている人がいる」

——そんな話を耳にしたことはありませんか?

江東区で障害年金の申請サポートを行っている「心と福祉とお金に強い社労士」西川です。

障害年金の目的をざっくり言えば、日常生活能力や労働能力が失われたことによる生活保障をすることです。

障害によって、十分に働けなくなり、生活できるだけのお金が稼げなくなることは、誰しも起こりうるものです。
それを保障するのが障害年金です。

ところが、労働できないのに障害年金がもらえなかったり、労働できて多くの収入を稼いでいるのに障害年金がもらえるケースがあります。

また、労働に支障があっても、日常生活に支障がないと判断されて、障害年金がもらえない、もしくは額が少なくなるケースがあります。

この記事では、なぜそのような違いが生じるのかを、制度の仕組みから分かりやすく解説します。

目次

障害年金の認定は「何を基準に」決まるのか?

まず、現行制度の障害年金認定基準を紹介します。

大きく分けると、次の二つの考え方があります。

外部障害機能障害が考慮され、お金を稼ぐ能力は考慮されていない
内部障害・精神障害お金を稼ぐ能力+日常生活の支障の両方が考慮される

外部障害・内部障害・精神障害の違い

外部障害眼、聴覚、音声または言語機能、肢体(手足など)の障害など
内部障害呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど
精神障害統合失調症、双極性障害、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など

外部障害の認定基準

外部障害の場合、障害認定基準に等級の基準が書かれています。

たとえば、眼の障害であれば、両眼の矯正視力がそれぞれ0.03以下であれば1級に認定されます。

このとき、所得がどれだけ多くても障害等級が認められます。

内部障害・精神障害の認定基準

内部障害や精神障害の場合、日常生活の支障(1級・2級)、労働の支障(3級)の程度で障害等級が決まります。

このとき、就労できず所得がなくとも、日常生活の支障が軽ければ障害等級認定がされません。

内部障害の中には、機能や治療基準で等級が決まるものもあります。

たとえば、慢性腎不全で人工透析を受けている場合、原則2級とされます。

内部障害は「(A)機能・治療基準で等級が決まるもの」「(B)日常生活・労働能力を総合的に判断するもの」に分けられます。

認定基準まとめ

障害区分認定基準の主軸日常生活・就労の影響
外部障害機能制限の程度直接の評価対象ではない
内部障害(A)医療処置の有無(例:透析)直接の評価対象ではない
内部障害(B)症状+生活・労働能力重要な判断材料
精神障害生活能力+就労能力核心的な判断要素

現行制度の課題と背景

障害年金の目的は、障害によって生活に必要なお金が稼げない場合の所得保障であるにもかかわらず、外部障害では所得は考慮されず、内部障害・精神障害では労働に支障があって所得が少なくても、日常生活の支障が少なければ障害年金をもらえない状況が生じています。

この点が、申請者の方が「不公平だ」と感じる理由の一つです。

また、外部障害と内部障害・精神障害では、認定基準が違うということも問題に挙げられるでしょう。

制度の構造上、どうしても不公平が生じやすい仕組みになっていますが、どうしてこんな作りになっているのでしょうか?

日本の障害年金制度は、「能力」よりも「機能」の制限を重視していることが分かります。

ここが日本の障害年金制度の本質的あり方(考え方)となるものです。

これは歴史的な経緯があって、機能重視で制度設計がされたようです。

日本の障害年金制度は、医学モデル(身体の状態)と親和性が高いです

機能制限を重視しているため、機能制限基準に該当しているものは、自動的に障害等級に認定されます。
機能制限を客観的数値で測定できるのは、外部障害になります。

内部障害・精神障害は、その性質上、機能制限を客観的に測定できません。
そのため、内部障害・精神障害では、機能制限に代わる測定方法が用いられます。

それが「日常生活能力」です。

なぜ「日常生活能力」が重視されるのか?

本来ならば、「どのくらい働けるか」「どの程度の収入が得られるか」といった“労働能力”を基準にするのが理想です。

しかし、日本では労働能力を客観的に測定する制度が存在しないため、代わりに「日常生活の支障の程度」を通じて、労働能力を推定しています。

障害の程度と労働能力の関係は個人差が大きく、客観的評価が困難。
また、就労能力測定テストのような測定制度が日本には存在せず、「現在働いているか」「いくら稼いでいるか」といったことしか判断材料がない。

つまり、「日常生活能力≒お金を稼ぐ能力」とみなして、日常生活能力の支障によって、障害等級を決めているというのが実態です。

「日常生活に支障がある人は、労働能力も低下している可能性が高い」という仮説。
実務面でのメリットとして、医師の診断書に記載させやすく、評価基準として統一しやすいことが挙げられます。

内部障害・精神障害では就労状況も考慮される

但し、内部障害・精神障害では、日常生活能力だけではなく、就労状況も考慮されます。
日常生活能力に支障があっても、フルタイムで働いていて高収入を得ている場合は、不支給の根拠とされます。

状態制度上の扱い
日常生活に支障あり × 無職支給対象(最も典型)
日常生活に支障なし × 就労不能不支給の可能性大(就労不能を証明しづらい)
日常生活に支障あり × 就労中就労収入が高いと不支給の可能性大
日常生活に支障なし × 就労中原則不支給(健常と見なされる)

日常生活の支障を正しく伝えるには?

現行制度では、内部障害・精神障害では、特に日常生活能力が障害認定を左右します。

その客観的基準は「医師が作成する診断書」になるため、診断書に「日常生活能力の支障」がきちんと織り込まれていないと、障害年金が受給できない、もしくは程度の軽い等級に認定されるということが起こります。

そのため、診断書に、障害状態がきちんと伝わるような資料を揃えて、医師に診断書を依頼することが求められるでしょう。

ご自身の症状や生活の状況をどう伝えればよいか迷う場合は、専門家に相談しながら準備を進めると安心です。

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