障害年金とは?障害年金の基本を知ろう

江東区で障害年金の申請サポートをしている「心と福祉とお金に強い社労士」西川です。

こちらは「障害年金の基本」について、全体像をざっくり解説しています。

目次

皆で暮らしを支える公的年金制度

日本には、国民みんなで暮らしを守るための「公的年金制度」があります。
いわゆる「年金」と呼ばれるものですが、老後の生活を支える「老齢年金」、障害を持ったときの生活を支える「障害年金」、生活を支える家族が亡くなったときに遺族の生活を支える「遺族年金」の3種類あります。

この年金制度は、社会全体で支えあうように作られていて、皆が保険料を払い、その保険料で年金を支払う「社会保険方式」が採用されています。

公的年金(社会保険方式)目的
① 老齢年金老後の生活を支える
② 障害年金病気や障害で日常生活や仕事に支障が出たときの生活を支える
③ 遺族年金生活を支える家族が亡くなったときに残された家族の生活を支える

障害年金って何?

障害年金は、ケガをしたり、病気になって、体が思うように動かなくなったり、心の病気になって、仕事や日常生活に支障が出たときに、国がお金を支給する制度です。

病気やケガで働けなくなると、お金が稼げなくなり、貯金がなければ生活ができなくなります。誰しもケガや病気になる可能性があり、それを社会全体で助け合う仕組みが欠かせません。
それが障害年金です。

障害年金は、もらえてラッキーなものではなく、病気やケガなどで日常生活に支障が出たときの生活を支えるために必要なお金です。

誰が障害年金を受けられるの?

障害年金は、障害で日常生活に支障が出たときにお金がもらえる制度ですが、いくつか条件があります。

日本の年金制度は、社会保険の仕組みが採用されており、国民が支払った保険料で賄っています(厳密には税金の補助があります)。

年金制度に入っていない人や、保険料の猶予や免除を受けずに、ただ支払っていないだけの人は障害年金をもらえません。

年金を払う「義務」があるのに、払っていない人は、障害年金をもらう「権利」が得られないということです。

国民年金に加入するのは20歳なので、障害年金をもらえるのは基本的には20歳からになります。

20歳前に働いていて厚生年金に加入している場合は、20歳前に障害厚生年金のみ受給できるケースがあります。

65歳以上になると老齢年金がもらえるようになるため、基本的には「働き盛りの20歳~65歳までの生活を守るもの」と考えてください。

65歳からの生活を支えるのは「老齢年金」になります

また、病気やケガで最初に病院に行った日(初診日)や、障害の状態がどの程度かというのが障害年金の支給にかかわってきます。

詳しくは別記事で紹介しています。

障害年金の種類

障害年金は、主に2つあります。

1つは「障害基礎年金」です。これは国民年金に入っている人が対象になります。
ちなみに国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方が加入します。
学生やフリーランス、自営業、農業従事者、専業主婦など、厚生年金に加入していない(できない)人は、国民年金に加入します。

もう一つが「障害厚生年金」です。これは厚生年金に入っている人が対象になります。
会社員、公務員などは、社会保険に加入しています。
厚生年金と健康保険をあわせて「社会保険」と呼びます。厚生年金と健康保険はセットで加入します。
アルバイトでも社会保険に加入している人は、障害厚生年金の対象となります。

厚生年金に加入している人は、自動的に国民年金に加入していることになります。
そのため、障害厚生年金(1級、2級)をもらえる人は、障害基礎年金ももらえます
それだけ多く支給されることになります。
日本の公的年金制度は、社会保険に加入している人に有利になっています。

2つの障害年金制度対象となる人特徴
障害基礎年金国民年金加入者(学生・自営業・専業主婦など)社会保険未加入者は障害基礎年金しかもらえない
障害厚生年金厚生年金加入者(会社員・公務員など)国民年金に自動的に加入(障害基礎・厚生両方もらえる。※3級は障害厚生のみ)
2つの障害年金制度

障害基礎・厚生年金の両方をもらえるのは基本的に65歳未満の方になります。65歳で老齢基礎年金の受給権を得ていると障害基礎年金の申請ができず、障害厚生年金のみの申請になります。障害厚生年金は、老齢基礎年金と同時に受け取ることができないため、「老齢基礎年金+老齢厚生年金」をもらったほうが得になります。そのため、例外はあるものの障害年金は基本的には65歳未満の方が申請する制度とお考えください。

どのくらいお金がもらえるの?

障害基礎年金

障害基礎年金には、1級(より重い)、2級の2つの等級があり、もらえる額が異なります。

等級年金額(年額)
障害基礎年金1級1,020,000円
障害基礎年金2級 816,000円
令和6年度の年金額(毎年改定されます)

障害基礎年金では、高校生までの子ども(もしくは20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子)がいる場合は、子の加算がもらえます
2人まで1人当たり234,800円(令和6年度)加算されます。
3人目からは1人当たり78,300円(令和6年度)の加算になります。

障害基礎年金では、配偶者の加算はもらえません。

障害厚生年金

障害厚生年金は、1級(より重い)、2級、3級と3つの等級があります。
3級は障害基礎年金にはなく、障害厚生年金のみ設定されています。
障害厚生年金の額は、もらっている給料の額や加入期間によって異なります。
障害厚生年金には最低保証額があり、612,000円(令和6年度)です。

等級年金額(年額)
障害厚生年金1級報酬比例部分×1.25+配偶者加算+障害基礎年金
障害厚生年金2級報酬比例部分×1.00+配偶者加算+障害基礎年金
障害厚生年金3級報酬比例部分 ※最低保証額612,000円

障害厚生年金では、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合は、配偶者の加算がもらえます(1級、2級のみ)
配偶者がいることで加算される金額は234,800円(令和6年度)です。

障害厚生年金3級は、障害基礎年金の支給及び配偶者の加算がありません。

障害年金を申請するには?

障害年金をもらうためには、審査を受ける必要があります。
この審査は、障害を持つ人の自宅に行って障害状態や日常生活を審査官が確認するということは、一切やりません。

障害年金をもらうための審査は、書類審査のみです。
つまり、書類だけで日常生活の支障や障害状態を証明しなければなりません。

これが障害年金申請の難しいところです。いくら障害状態に該当していても、書類上、それが証明されなければ障害年金審査には通りません。

それら証明する書類を集めて、書類を提出し、審査が通ったら障害年金がもらえます。

障害状況等を証明する書類で大事なのは「医師の診断書」です。
いくら日常生活に支障が出ていても、病院に行っていなければそれを証明できません。
そのため、まずは病院に行って医師に診断してもらい(初診日)、障害認定日(初診日から1年6か月後or症状固定日)が来たら、医師の診断書をもらいます。

障害が出たらすぐに障害年金をもらえるの?

障害で日常生活に支障が出たらすぐに障害年金をもらいたいところですが、基本的にはそれができない制度になっています。

いくつか例外がありますが、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日(初診日)から、1年6か月を過ぎた日、または病気やケガが治った日(症状が固定した日)を「障害認定日」として、そこから障害年金がもらえます。

つまり、基本的には初診日から1年6か月経たなければ、障害年金はもらえません。申請に時間がかかるため、障害年金が入金されるのはさらに後になります。

すぐに障害年金がもらえないのは残念ですが、社会保険に加入している会社員は、健康保険で「傷病手当金」が通算1年6か月もらえます。

そこから障害年金に引き継げると考えると、その間の生活は成り立つということになります。

とはいえ、障害年金を申請してから受給まで半年くらいかかることから、どうしても生活資金の途切れは出てくると思います。また、社会保険に加入できないフリーランスや自営業の方は、傷病手当金がもらえないのでそこは厳しい制度だと個人的には感じます。

障害年金を受け取ることは特別なことではない

障害年金を受け取ることに抵抗がある方もいらっしゃいます。
一つ言えることは、障害基準に該当しているときに障害年金をもらうことは「権利」です。

たとえば、がん保険に加入していて、がんになったときに保険金をもらうことは権利です。それをあえて受け取らない人はほとんどいないでしょう。

障害保険も保険なので考え方としては同じです。がん保険と違って、自分の意思で加入するか、強制加入かの違いだけで同じことです。

最後に

障害年金は、病気やケガで日常生活に支障が出たとき、国がその人を支えるために用意している制度です。
まずは、そういう制度があるんだと知っておくことが大切だと私は思います。
そういう制度があると知っておくだけで、安心できるのではないでしょうか。

人生は、自分でコントロールできないことだらけです。
誰しもケガをしたり、病気になりたくありませんが、なる可能性は誰にでもあります。

そうなったときに備えて、暮らしを支えるために障害年金があります。

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