江東区で障害年金の申請サポートをしている「心と福祉とお金に強い社労士」西川です。
メンタルに不調が出て、働くことができなくなったとき、社会保険に加入していれば、傷病手当金をもらうことができます。
その後、退職した場合、今度は失業手当(失業保険)をもらえるのでしょうか?
また、障害年金を受給したい場合、同時に受給できるのでしょうか?
今回の記事では、こういった疑問を解消するための記事を書きました。
傷病手当金とは
傷病手当金は、社会保険に加入している人が、業務外での病気やケガで働けなくなったときに支給されるお金です。
会社員・公務員 | 社会保険(健康保険)加入なので傷病手当金あり |
自営業・フリーランス | 国民健康保険は傷病手当金がない |
業務外でのケガや病気 | 健康保険 |
業務中・通勤中のケガや病気 | 労災保険 |
傷病手当金はいくらもらえる?
直近12か月の標準報酬月額を平均した金額÷12×2/3
つまり、過去1年間の平均給料の2/3が支給されることになります。
いつからいつまでもらえる?
休日や有休休暇を含めて、連続して3日間仕事を休み、4日目以降も仕事に就けなかった場合に支給されます。
休んでいる間も会社から給料をもらっている場合は?
休んでいる間に給料が全額支払われている場合は、傷病手当金は支給されません。
給料が一部支払われている場合は、給料の日額が傷病手当金の日額より少ない場合に、差額が支給されます。
医師の診断書が必要
傷病手当金を受給するためには、単に仕事を休んでいるだけではダメです。
そのため、医療機関を受診することが必須です。
傷病手当金の手続きは?
申請は職場がやってくれるところがほとんどです。
但し、必要書類の準備は必要です。
まれに職場がやってくれずに自分で手続きをしなければならない職場もあります。
あるいは、退職後であれば、自分で手続きをすることになります。
その場合は、健康保険協会(組合)に書類を直接提出します。
傷病手当金をもらっているときに退職するとどうなる?
傷病手当金をもらっているときに、退職することになった場合ですが、条件を満たせば、1年6か月になるまでは続けて傷病手当金をもらうことができます。
- 退職日まで継続して1年以上健康保険に加入していること
- 退職日の前日まで連続して3日以上欠勤し、退職日も休業していること
- 退職後も働けない状態が継続していること
たとえば、4月1日に働き始めてから、その年の6月末に病気になり、7月1日から12月末まで6か月間傷病手当金を受給し、12月末で退職することになったとします。
その場合、1年以上健康保険に加入しているという条件を満たせないため、傷病手当金は、12月末までしか受け取ることはできません。
もし、7月から翌年3月まで9か月間傷病手当金を受給し、3月末で退職することになったとしたら、退所後も9か月は傷病手当金を受給できることになります。
退職日に出勤すると退職後に傷病手当金を継続受給できなくなる!
注意しなければならないことは、退職日に出勤すると、退職後に傷病手当金を受け取れなくなってしまうということです。
病気で働けない状態なのに、退職日で最後だからといって、最終日だけ無理やり出勤したとします。
そうすると、退職後に傷病手当金を継続受給できなくなってしまうので注意が必要です。
傷病手当金をもらいながら失業手当をもらうことはできる?
退職後も傷病手当金を受け取れる条件を満たしていて、退職した場合は、通算1年6か月間は、継続して傷病手当金を受け取ることができます。
通常、退職後は失業手当(失業保険)をもらうことになりますが、傷病手当金をもらいながら、失業手当をもらうことはできるのでしょうか?
失業手当は、正式名称は、雇用保険の「基本手当」です。ここでは、一般的に使われている呼び名の失業手当と書きます。
失業手当を受給できる要件の一つが、働ける状態であるということです。
傷病手当金を受給できる要件の一つが、病気やケガで働けない状態であることです。
これらは相反するため、両方を満たすことができません。
そのため、傷病手当金をもらいながら、失業手当をもらうことはできません。
傷病手当金の受給期間が終了し、ハローワークで求職の申し込みをすれば、失業手当の受給が可能です。
失業手当は離職後1年間が受給期間となりますが、病気やケガで働けない場合は最長4年間まで延長することができます。ハローワークで失業手当の受給期間延長を申請する必要があります。
傷病手当金と雇用保険の傷病手当は両方とも受け取れる?
失業保険(正式名称「雇用保険」)の中に、傷病手当というものがあり、病気やケガが原因で働けないときに受け取れるものがあります。
健康保険の傷病手当金と似ていますが、雇用保険の傷病手当と同時受給、あるいは時期をずらして受給することはできるのでしょうか?
傷病手当金(健康保険)は、在職中の病気やケガが原因で働けなくなったときにもらえるものです。
傷病手当(雇用保険)は、退職後の求職活動中に病気やケガが原因で働けなくなったときにもらえるものです。
手当の種類 | ケガ・病気の時期 |
---|---|
傷病手当金(健康保険) | 在職中 |
傷病手当(雇用保険) | 退職後(求職活動中) |
これらを両方満たすことは物理的にできないため、障害手当金と障害手当はどちらかしか受け取れないことになります。
両方受け取れるケースとしては、たとえば、適応障害で休職し、傷病手当金をもらい、退職後に回復し、ハローワークで求職の手続きをした後で、事故でケガをしてしまい、働けなくなった場合に雇用保険の傷病手当をもらうというケース(別傷病のケース)になります。
傷病手当金と障害年金は同時に受給できる?
退職後も傷病手当金をもらえる人は、失業手当をもらえないことが分かりました。
では、今後も働くことが難しい人は、障害年金が選択肢になるでしょう。
障害年金をもらえる時期と傷病手当金をもらえる時期が重なった場合、どうなるでしょうか?
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。
障害基礎年金と傷病手当金は、両方とも満額受け取ることができます。
障害厚生年金と傷病手当金は、障害厚生年金が優先され、傷病手当金は支給停止になります(併給調整)。
病気やケガの種類が異なれば、支給停止にはなりません(併給調整されません)。
たとえば、うつ病で障害厚生年金を受給していて、ケガで傷病手当金を受給している場合は、病気やケガの種類が異なるため、両方とも満額受け取ることができます。
傷病手当金と障害年金の受給時期の空白をどうするか?
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなってから通算1年6か月間支給されます。
障害年金は、基本、初診日から1年6か月後が障害認定日となり、その時点で障害等級に該当する障害状態であれば、障害認定日以降、障害年金が受給できます。
そう考えると、退職後も通算1年6か月になるまでは傷病手当金で生活し、その後は障害年金で生活できると考えられますが、実際には障害年金をもらえるまでタイムラグがある場合が大半です。
障害年金の入金があるのは、一般的に申請から5~6か月です。
申請準備期間を含めると6~9か月かかります。
そうなると、傷病手当金の支給が終わってから、障害年金が受給できるまで半年以上の期間が空いてしまうことになります。
半年以上生活できる貯金があれば別ですが、この期間の生活費をどう賄うかを考えておかなければなりません。
なるべく早いタイミングで対策を考える必要があるでしょう。
まとめ
- 条件を満たせば退職後も傷病手当金を受け取れる
- 傷病手当金と失業手当は基本的に両方受け取ることはできない
- 傷病手当金と雇用保険の傷病手当は基本的に両方受け取ることはできない
- 傷病手当金と障害厚生年金は併給調整される(障害厚生年金が優先)
- 傷病手当金と障害年金初回支給日までの半年以上のタイムラグの生活費が課題
退職後の生活設計が重要!
傷病手当金の受給終了後、障害年金の申請には半年以上かかることが多いため、早めに生活費の計画を立てておきましょう。
障害年金申請を検討中で、「自分の場合はどうなる?」と不安な方は、社労士に相談するのもおすすめです。
江東区在住の方は、ぜひ、ぼたん社労士事務所までご相談ください。