20歳前に障害がある方必見!20歳前傷病の障害年金の仕組み・条件・申請を徹底解説

江東区で障害年金の申請サポートをしている「心と福祉とお金に強い社労士」西川です。

障害年金は、基本的には20歳から65歳までに日常生活や就労に支障が出たときの生活を保障してくれる制度です。

65歳以上は老齢年金がありますが、20歳前に障害がある場合はどうなるのでしょうか?

こちらの記事では、生まれついての障害や、若いうちの病気やケガなどにより、20歳前に障害がある場合の障害年金の仕組みと請求の注意点について解説します。

目次

障害年金はいつからもらえるか?

この記事では、20歳前に病気やケガ、先天性の病気や障害などで、日常生活に困難を抱えている人(以降は「20歳前傷病」と呼びます)を想定しています。

具体的な対象者の例
  • 生まれつきの知的障害によって、特別支援学校に通い、日常生活でも介助が必要な方
  • 軽度の知的障害でも、自立した生活や就労に困難を抱える方
  • 小児期に特定疾患(たとえば筋ジストロフィーや神経難病)と診断され、日常生活での制限がある方
  • 幼少期に視覚障害や聴覚障害を生じた方
  • 小児期からの重度のてんかんや頻発する発作の影響で、日常生活や就労に支障がある方
  • 小児期に交通事故や外傷で肢体不自由になり、日常生活や就労に支障がある方
  • 幼少期に事故で脳障害を負い、その後の発達や日常生活に制約がある方
  • 20歳前に統合失調症、うつ病、双極性障害を患い、日常生活や就労に支障がある方
  • 20歳前に発達障害(自閉スペクトラム症、ADHDなど)と診断され、日常生活や就労に支障がある方

そういう方は、障害年金をいつからもらえるのでしょうか?

基本的には、20歳になった日(20歳の誕生日の前日)の翌月から障害基礎年金が支給されます。

申請して審査に通らないともらえません。

例外があります。

20歳前に働いていて、厚生年金に加入している場合は、20歳前に障害厚生年金のみもらえる可能性があります。この場合、障害基礎年金は20歳になってから支給(要申請)されます。

また、初診日から1年6か月後の障害認定日が20歳を超えるときは、20歳になった日ではなく障害認定日の翌月から支給されます。

障害年金はいくらもらえるか?

本記事では、働いていない(厚生年金に加入していない)人を想定します。

働いていない20歳前傷病の方は、障害基礎年金が支給対象になります。
会社員や公務員を対象とする障害厚生年金はもらえません。

令和6年度の障害基礎年金の額

等級年金額(年額)月額換算
障害基礎年金1級1,020,000円85,000円
障害基礎年金2級816,000円68,000円

1級のほうが、障害が重い(日常生活や就労の困難さが大きい)ため、もらえる額も多くなります。

子の加算は2人まで各234,000円加算されますが、20歳前の場合、子がいない場合がほとんどでしょう。
将来、子どもが生まれたら、子の加算がもらえるようになります。

障害厚生年金には配偶者加算(234,000円・令和6年度)がありますが、障害基礎年金のみ支給される人は、将来結婚しても配偶者加算はもらえません。

20歳前傷病は4つの条件のうち2つは問われない

障害年金をもらうには、3つの条件をすべてクリアする必要があります。

①初診日に年金に加入していること(初診日要件)
②年金の保険料を支払っていること(保険料納付要件)
③障害の程度が一定以上であること(障害状態該当要件)

私は、初診日要件は「初診日に年金に加入していること」と「初診日を証明できること」をまとめて1つの要件にして説明していますが、20歳前傷病の場合、それらを区別したほうが分かりやすいので、この記事では障害年金をもらう条件を4つに分けて説明します。

①初診日に年金に加入していること(初診日・年金加入要件)
②初診日を証明できること(初診日・証明要件)
③年金の保険料を支払っていること(保険料納付要件)
④障害の程度が一定以上であること(障害状態該当要件)

20歳前傷病の場合、当然、年金に加入していない(したくてもできない)ため、①「初診日に年金に加入していること」の要件は問われません。

国民年金は20歳になった日(20歳の誕生日の前日)の属する月から保険料を支払います。4月1日誕生日の人は3月分から保険料を支払います。

また、年金に加入していないので、保険料を支払うこともありません。③「年金の保険料を支払っていること」の要件も問われません。

つまり、4つの条件のうち、「①初診日に年金に加入していること」と「③年金の保険料を支払っていること」は問われません。

20歳前傷病の場合の要件は、「②初診日を証明できること」と「④障害の程度が一定以上であること」のみです。

さらに、先天性の知的障害の場合は「②初診日を証明できること」も不要になります。

先天性の知的障害は、生まれた日が初診日という扱いになるため、それを証明する書類「受診状況等証明書(病院に書いてもらう初診日を証明する書類)」は不要になります。

先天性の知的障害の場合の要件は、障害状態に該当しているかどうかのみが問われます。

頭部外傷や高熱などが原因で知的障害になった場合は、先天性ではないため、初診日は生まれた日にはなりません。その場合、その原因について初めて医療機関を受診した日が初診日となり、受診状況等証明書の提出が必要です。

いつの時点で障害状態に該当すればもらえるの?

20歳前傷病の場合、障害状態に該当しているかが問われますが、障害年金では、いつの時点で障害に該当していることが求められるのでしょうか?

20歳前傷病の場合、障害年金で問われるのは、20歳になった日(20歳の誕生日の前日が障害認定日)に障害に該当しているかどうかが問われます。

障害状態を証明する書類は、医師の診断書になります。

障害認定日の前後3か月間(計6か月間)の間の日付の診断書が必要です。

前にも書きましたが、障害年金がもらえるのは、障害認定日(20歳の誕生日の前日)の翌月分からです。

但し、障害認定日が20歳以降の場合は、20歳の誕生日の前日の翌月分からではなく、障害認定日の翌月分から障害年金がもらえます。

支給停止の条件あり

20歳前傷病で、障害基礎年金をもらった場合、障害年金の支給が制限される条件が課されてしまいます。

通常、障害年金は年金に加入して、年金保険料を納めている人が対象になります。20歳前傷病の場合は、その条件に当てはまらないのですが、だからといって障害年金を受給できないのは問題です。
そのため、20歳前傷病の場合でも、障害年金を受給できる制度になっていますが、所得が多い人には障害年金の受給を停止するというような一定の制限を課しています。

20歳前傷病の障害年金受給には、4つの支給停止要件があります。

20歳前傷病の支給停止要件支給停止額
①所得が基準額を超えたとき半額もしくは全額支給停止
②他の年金給付を受けられるとき他の年金給付分が支給停止
③日本国内に住所がないとき全額支給停止
④少年院や刑務所などに収容されているとき全額支給停止

ちなみに、20歳前傷病以外(障害厚生年金、20歳以降に初診日がある障害基礎年金)では、上記4つのような制限は課されません。
所得がどれだけ多くても、海外に住所があっても、障害年金は支給停止されません。

但し、症状が軽減して等級が3級以下に下がった場合は、障害年金の支給が停止されます。また、同一の傷病による障害について、労働基準法の規定による傷害補償が受けられる場合は、障害年金の支給が6年間停止されます。

20歳前傷病の所得制限基準

この記事では4つの支給停止要件のうち「①所得が基準額を超えたとき」のみ解説します。

前年の所得額が4,721,000円を超える場合は、障害年金の全額が支給停止となります。
前年の所得額が3,704,000円を超える場合は、障害年金の半額が支給停止となります。

扶養親族がいる場合は、扶養親族1人につき、所得制限額が380,000円増えます。
70歳以上の扶養親族や16歳~23歳の扶養親族などは、加算額が変わり(増え)ます。

支給停止となる期間は、10月から翌年9月までとなります。

たとえば、2023年1月~12月の所得が、4,721,000円を超えると、2024年10月~2025年9月までの障害基礎年金の額が、全額支給停止になります。
2024年の所得が3,704,000円以下になれば、2025年10月から全額支給されます。

ちなみに年金支給月は偶数日ですが、10月15日支給分から停止になるわけではありません。10月分、11月分は12月15日に支給されるため、12月にもらえる年金から支給停止になります。

子の加算額は、障害年金が全額支給停止の場合は、子の加算額も全額支給停止となりますが、障害年金が半額支給停止の場合は、子の加算額は全額支給されます。

年収換算でどのくらい?

所得というのが分かりにくいのですが、これは年収(総支給額)や手取り金額とは異なることに注意が必要です。

上記の472万円、370万円というのは年収ではありません。
年収から所得控除を差し引いた額が、所得になります。

会社員であれば、給料から給与所得控除を差し引くことができます(これを「給与所得」と呼びます)。
そこからさらに、支払った社会保険料や医療費控除などを差し引くことができます。
所得税の計算では、基礎控除なども差し引いて「課税所得」を算出しますが、20歳前傷病で支給停止となる基準に使われる「所得」は、課税所得と異なり、本人の障害者控除や基礎控除は差し引くことはできません。

年収の目安は概算でしか出せませんが、100%給与収入で、扶養親族なしという前提で、下記のサイトで計算してみました。

年収775万円のとき、計算された課税所得(基礎控除が引かれている)に、基礎控除を足す(基礎控除を差し引くことができないため)と、472.5万円となり、全額支給停止基準所得とほぼ同額です。

全額支給停止の年収ボーダーラインの目安はこのあたり(775万円程度)になりそうです。

半額支給停止の基準も同様に算出してみます。

年収635万円のとき、計算された課税所得(基礎控除が引かれている)に、基礎控除を足す(基礎控除を差し引くことができないため)と、370万円となり、半額支給停止基準所得とほぼ同額です。

半額支給停止の年収ボーダーラインの目安はこのあたり(635万円程度)になりそうです。

計算間違っていたらごめんなさい。参考程度にしてください

障害年金はどのようにしたらもらえるか

障害年金をもらうには、障害年金を申請する必要があります。

必要な書類を揃えて、市区町村の障害基礎年金の担当窓口か年金事務所に提出し、審査を経て、支給されます。

20歳前傷病の場合、障害年金の申請をサポートする人は、親か支援者、もしくは私のような社労士になります。
社労士の場合は報酬が発生します。年金の2か月分+消費税が相場です。

申請に必要な書類

先天性の知的障害で申請する場合の書類は下記になります。

  • 年金請求書
  • 医師の診断書(20歳になった日の前後3か月の日付の診断書)
  • 病歴・就労状況申立書
  • 年金生活者支援給付金請求書
  • 銀行の通帳見開きページのコピー
  • 障害者手帳のコピー

このケースでは初診日を証明する受診状況等証明書は不要です。
例えば発達障害で申請する場合は、受診状況等証明書が必要になります。

病歴・就労状況等申立書は、出生日から現在までの日常生活状況や、就労状況、治療経過、自覚症状の有無などを時系列で書いていきます。

申請からもらえるまでの期間は?

申請してから審査は3か月程度ですが、それ以上になることもあります。

審査が決定してから、初回の支給まで50日程度かかります。

申請から支給までの期間は、4か月半~6か月ほどかかります。
申請までの準備を含めると、さらに時間を見ておく必要があります。

いつから障害年金の準備を始めたらいいの?

20歳前傷病による障害基礎年金の申請で必要な診断書は、20歳になった日(20歳の誕生日の前日)前後3か月の診断書になります。

かかりつけ医がいて、障害年金の診断書作成に同意している場合は、20歳誕生日の3か月前(余裕をもって半年前)くらいから申請準備をやっていきましょう。

障害年金の診断書を書いてもらう医師がいない場合は、病院選びからやっていく必要があります。
医師が決まっても、検査などが必要で、すぐに診断書を書いてもらうことは難しいので、少なくとも20歳誕生日の半年前には、準備を始めたほうがよいでしょう。

もし、親の立場で、社労士に依頼せずに自分で申請したいという場合は、制度や申請手続きを理解するための勉強時間が必要になります。
その分、余裕を見ておいたほうがよいでしょう。

まとめ

障害年金は、日常生活や就労に支障がある場合に支給される公的制度です。特に、20歳前傷病(20歳前に病気やケガ、先天性の障害などで日常生活に困難がある場合)は、以下の仕組みや条件が特徴です。

  • 支給開始のタイミングは、20歳の誕生日の前日の翌月から支給される。
  • 障害認定日が20歳以降の場合は、その翌月分から支給される。
  • 受給額は、障害基礎年金1級で1,020,000円(年額・令和6年度)、障害基礎年金2級で816,000円(年額・令和6年度)
  • 通常の障害年金で問われる「年金加入」「保険料納付」の要件は適用されない。
  • 20歳前傷病の障害基礎年金は、所得が一定額を超えると、1年単位で半額もしくは全額支給停止となる。
  • 申請準備時期は、20歳の誕生日の半年前が目安。
  • 申請から支給決定まで、4か月半~6か月かかる。

20歳前傷病の障害年金申請は、制度の理解と準備が必要ですが、親や支援者の協力で進めることができます。
自力での申請が難しい場合は、社労士に依頼することもご検討ください。

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